「チームプレー型AI」x「物流」

1. マルチエージェントフィジカルインターネット

物流業界では、ドライバー不足や高齢化、EC市場拡大に伴う小口・即時配送の増加により、従来の人力でのオペレーションが限界を迎えつつあります。こうした課題に対する新たなアプローチとして注目されているのが、物流をネットワーク全体で最適化する「フィジカルインターネット構想」です。

フィジカルインターネットとは、インターネットのデータ転送の仕組みを物流に応用したもので、荷物をユニット(モジュール型コンテナ)として標準化することで、企業や輸送モードをまたいだ最適な物流を実現する構想です。

この構想の実現には、配送車両や倉庫といった多数の物流リソース間の高度な連携が必要となります。そこで、マルチエージェントフィジカルインターネットでは、物流リソースのそれぞれにチームプレイ型AIを搭載することで、それぞれが互いの状況を考慮しながら自律的に協調行動する仕組みを実現します。

以下のような特徴があります。

  • 配送車両が担当荷物を自律的に決定
  • 渋滞や荷待ちを回避する自律的な経路・配車判断
  • 数万規模の配送車両、倉庫ロボットを同時に制御可能

詳細については、以下の資料をご覧ください。

2. マルチエージェントAIによる倉庫内管理

物流倉庫では、AGV(自動搬送ロボット)やAMR(自律搬送ロボット)を用いた倉庫内作業の自動化が進みつつあります。しかし、通路幅が限られた倉庫環境では、ロボット同士の渋滞や衝突、デッドロックといった問題が発生しやすく、導入台数を増やすほど全体の制御が難しくなるという課題があります。そのため、多くの現場ではロボットの導入台数が制限され、完全自動化には至っていません。

倉庫内ロボットのデッドロック
(https://x.com/Rainmaker1973/status/1900218844083257643?s=20 より引用)
倉庫内のマルチエージェント経路計画。
(https://biorobotics.org/posts/2023/08/21/multi-agent-path-finding/ より引用)

チームプレイ型AIを倉庫内の各ロボットに導入することで、こうした課題を解決し、倉庫内作業の完全自動化を実現します。本技術には、以下の特長があります。

自律協調行動
ロボット同士が互いの位置や行き先を考慮し合い、衝突や渋滞を回避できる経路を決定します。これらの判断は自律的に行われ、細かなルールベースの制御を行う必要がありません。

ロボットの大量導入と完全自動化
マルチエージェント経路計画の研究成果を応用することで、少人数の監視体制でも数百台規模のロボットを効率的に制御できます。従来のシステムでは困難だった大規模同時稼働が可能となり、倉庫内オペレーションの完全自動化を実現します。

マルチベンダー連携
VDA5050などの標準規格に準拠することで、複数ベンダーのロボットを横断的に連携させることができます。「棚搬送はA社、ピッキング支援はB社」といった適材適所の組み合わせが可能となり、特定メーカーに依存しない柔軟な設備投資を実現します。

現場導入コストの削減
倉庫ごとの走行ルールやレイアウト特性はシミュレーション上で学習可能なため、現場ごとに複雑な制御プログラムを個別開発する必要がありません。導入時の調整期間を短縮でき、エンジニアの現地対応コスト削減にもつながります。